歯科矯正を検討している方の中には、しゃくれで悩まれている方も多くいるのではないでしょうか。見た目はもちろん、咀嚼や滑舌にも問題を生じて苦労しているかもしれません。 この記事では、そんなしゃくれを改善するために、しゃくれを矯正するまでの流れを詳しくご紹介します。しゃくれを治療するにあたって覚えておきたい知識を解説しているので、この記事を読んで必要な知識を身に着け、医師に相談しましょう。
しゃくれを矯正する流れ
しゃくれを治すためには、上の歯を前に出し、下の歯を中に入れ、上下の歯を動かして自然なかみ合わせにするという流れで矯正治療が行われます。 実際に矯正治療をはじめるためには、カウンセリングで歯や下顎を確認した上で治療をはじめます。矯正方法は、表側矯正や裏側矯正、マウスピースなど歯科医院で取り扱いのある方法であれば、選ぶことができるでしょう。
なお、場合によっては上下の歯列を移動させるために、数本の抜歯が必要になることもあります。歯科医師から説明を受けて、納得して治療に取り掛かるようにしましょう。
しゃくれを矯正する治療期間の目安は2年です。歯の状況によって、治療期間は伸びることがあります。
骨格に問題がある場合は外科手術が必要
しゃくれは矯正治療だけで改善できるケースは多いですが、骨格が原因で症状が重度な場合は、外科手術が必要なケースもあります。外科手術は、顎の位置や骨の形状を変えるために行われます。外科手術にはおおよそ2週間程度の入院が必要になります。 なお、サージェリーファーストという治療方法もあります。術前矯正を省いて先に外科手術を行う方法で、従来の方法よりも治療期間が短くなるなどがあります。
いずれにせよ外科手術を行うと、短期間で見た目を変化させることが可能です。しかし、身体への負担や、かみ合わせなどの問題が生じるおそれもあります。矯正で改善が難しい場合などは、外科手術を検討しましょう。
しゃくれの主な種類
一般的にしゃくれは、下顎が上顎よりも前に出ていることをいいます。しゃくれは原因が骨格にあるものと、歯並びにあるもので大きく2つに分類できます。それぞれどういったものか詳しく解説します。
下顎前突
下顎前突は、下顎の骨が前方に突き出してしまっている状態のことをいいます。通常は、上の歯が下の歯よりも前面に出ていますが、下顎前突の場合は下の歯が上の歯よりも前面に出ます。 下顎前突の場合は、下顎の位置や大きさに異常が生じることが原因です。かみ合わせが逆になってしまい、食事の際に食べ物を噛み切れないなどの症状が生じます。
反対咬合
反対咬合は、下の歯が上の歯よりも前に出てしまっている状態のことをいいます。反対咬合のひとつを受け口とも呼びます。主に歯並びが原因ですが、口呼吸や幼少期の顎を突き出すような癖が原因になることもあります。
歯周病にかかりやすくなったり、虫歯ができやすくなったりするデメリットがあります。反対咬合は下顎前突同様に、成長とともに治療が難しくなることが多く、症状が現れた段階で早期の治療が重要とされています。
しゃくれの原因
しゃくれは先天的原因と、後天的原因によるものがあります。先天的原因には遺伝がありますが、遺伝以外は後天的原因によるものです。
遺伝によるもの
まず、多くみられるケースは先天的な遺伝が原因で、しゃくれになってしまうケースです。遺伝で下顎の骨格が大きく成長してしまい、上顎が小さいままだとしゃくれの原因になります。日本人は、ほかの人種よりも、遺伝でしゃくれになりやすい傾向があります。
遺伝が原因の場合は、顎骨の異常だけでなく、かみ合わせも前にずれやすいです。また、正しい位置でかむことができないため、顎がずれて骨格が歪んでしまう危険性もあります。 大人になると治療が難しくなることもあり、可能な限り幼少期からの治療が望ましいとされています。
幼少期の癖によるもの
後天的に、日ごろから顎や舌を突き出す癖が、しゃくれの原因になるケースもあります。口腔習癖といい、かみ合わせを変えてしまう悪い癖は、歯並びを悪くしてしまう原因にもなるのです。
この場合は歯並びが原因であるため、骨格には問題がないケースがほとんどです。基本的に矯正治療のみで改善できますが、口腔習癖になってしまっている場合は、口腔筋機能療法を取り入れる場合もあります。
口腔筋機能療法は、正しい舌、口の動きを覚えていき、正しく機能させる訓練のことです。口腔習癖が原因の場合は、矯正治療と併用し、かみ合わせからしゃくれを改善していきます。
口呼吸によるもの
口呼吸も、しゃくれの原因になる可能性があります。鼻づまりや鼻の疾患などで、口呼吸がメインの場合は注意が必要です。 口呼吸になると、舌は下顎の内側に張り付くようになります。すると、下顎に張り付いた舌の力で下顎の歯列を広げてしまい、逆に舌の支えをなくした上の歯列は、ほほの圧力を受けて小さくなるのです。
よって、上顎と下顎の歯列の大きさに差異が生じ、反対咬合がしゃくれの原因を引き起こします。この場合は矯正治療と並行して、呼吸の改善が必要になるでしょう。
歯の生え変わりによるもの
子どものころに乳歯から永久歯に生え変わるタイミングで、生え変わりがうまくいかずに、かみ合わせから反対咬合のままになってしまうケースです。反対咬合からしゃくれになります。 反対咬合になっていると気づいた段階で矯正治療をはじめると、通常通りのきれいな歯並びにすることができます。
しゃくれと受け口の違い
しゃくれは下顎の位置や大きさなどに問題があるのに対し、受け口は歯並びに原因があるといった違いがあります。受け口は不正咬合のひとつで、反対咬合と呼ばれるものです。下の歯が、上の歯よりも前に出てしまっている状態を指します。 しゃくれと受け口は外見的には似ているため、自身で見た目から判断することは難しいかもしれません。いずれにせよ、早期の治療を行った方がいいでしょう。
しゃくれを放置するリスク
しゃくれは見た目だけでなく、放置するとさまざまな悪影響を及ぼす可能性があります。代表的なものを2つご紹介します。
滑舌が悪くなる
しゃくれを放置すると、滑舌が悪くなることがあります。特にサ行とタ行が発音しづらくなる可能性があります。 滑舌が悪いと相手が聞き取りにくくなってしまい、コミュニケーションが取りづらくなったり、心理的に会話するのが嫌になってしまったりするリスクがあります。見た目だけでなく、心理的なマイナス要素も考えると、デメリットが大きいです。
かみ合わせが悪くなる
しゃくれは、通常よりもかみ合わせが悪くなります。かみ合わせが悪いとうまく咀嚼することができずに、消化不良などを起こしてしまう可能性があります。
下の歯が前に出ていることで、前歯同士の接触も悪くなり、うまく噛み切れないことが食事のストレスにもつながりかねません。
また、顎は首などの身体の軸となる骨との関係性があります。ずれたかみ合わせの箇所を、ほかの筋肉がカバーすることでほかの筋肉にも緊張が生じ、肩こりや頭痛の原因になるリスクがあるのです。
さらに、顎関節症のリスクも高まります。顎関節症は顎のずれなどが原因で発生することもあるため、通常よりも顎関節症になりやすいといえるでしょう。 顎関節症は、口を開けるときに痛む、十分に口を開けられなくなるなどの症状が生じます。食事の際に口が開かないと、食事も楽しめなくなってしまうおそれがあるでしょう。
まとめ
今回は、しゃくれを矯正する流れや、しゃくれの原因になるもの、放置するリスクなどをご紹介しました。また、しゃくれには歯並びと骨格によるものがあり、原因によっては外科手術が必要になる場合もあります。 外見からは分からないため、自分で判断せずに一度歯科医院に相談してみることをおすすめします。
見た目だけでなく、放置すると滑舌の悪化や、かみ合わせなどから顎関節症、肩こりなどのリスクがあるため可能な限り早期の治療が求められます。お悩みを解消し、見た目もかみ合わせも理想の歯並びを手に入れましょう。