矯正治療で用いられるアンカースクリューですが、とても痛いのではないかと恐れてしまう方も多いのではないでしょうか。そんな方のために、どれぐらい痛いのか？どんな人に向いているのか？どんなメリット・デメリットがあるのかをまとめました。
アンカースクリューと呼ばれる小さなネジを歯茎に埋め込んで、それを起点にほかの歯を引っ張って歯並びを整える矯正治療が、近年よく用いられるようになりました。 これだけ聞くと、とても痛そうな印象ですね。しかし実際のアンカースクリュー治療は、想像よりもずっと短時間で済み、痛みも少なく手軽です。正しく理解すれば気持ちよく治療に臨むことができるでしょう。 今回は、このアンカースクリューについて解説します。
アンカースクリューは痛い？
「アンカースクリュー」とは、矯正治療に用いられる、小さな金属製のネジの呼称です。直径が約1.5mm、長さが約6mm〜8mmという小ささから「ミニインプラント」とも呼ばれます。 このアンカースクリューを使った矯正治療では、スクリューを歯茎の骨に埋め込み、そのスクリューからほかの歯にワイヤーなどをかけて引っ張りながら、徐々に動かしていきます。 体に埋め込むものですので、アンカースクリューは、アレルギーなどのリスクを下げるため、人間の体になじみやすいとされるチタン合金が使用されています。 処置の際に使用するのは、ほんの少しの局所麻酔だけです。処置の後の痛みもとても少なく、ごく普通の鎮痛剤でやわらげられる程度のものです。 アンカースクリューは、矯正治療をしている間だけ使用されるものです。治療が終わると取り外すという処置が生じますが、痛みとしては無麻酔でさっと抜いてしまえるほどです。麻酔を使う場合でもごく少量で十分です。処置後の痛みも出づらく、抜いた後の歯茎の穴は数日で塞がります。 アンカースクリューによる矯正治療は、一見ものすごく痛いような印象ですが、実はほかの矯正治療に比べて痛みが弱いものなのです。 痛みの感じ方は人それぞれですが、比較的多くの人にとって少ない痛みで済む治療であると言ってよいでしょう。
アンカースクリューのデメリット
アンカースクリューを使用した際にデメリットはあるのでしょうか？2つ考えられることについてご紹介します。
入れた直後は痛むことがある
比較的痛みが少ないとされるアンカースクリューですが、埋め込んだ直後は多少の痛みを感じることがあります。 ただし、その痛みもそれほど長くは続きません。多くが2～3日で治まり、痛み自体も痛み止めの薬を飲むことで抑えられる程度です。心配な場合は、事前に医師に相談して治療後に痛み止めを出してもらえるようにしておくとよいでしょう。 まれにアンカースクリューを植えた周辺の口内環境が悪かったり、汚れがたまっていたりすると、そこからバイキンが入って炎症を起こしてしまうという場合もあります。しっかりと歯を磨いて、口内環境を清潔に保つようにしましょう。 もしも痛みや腫れが続く場合には、ほかの要因も考えられます。すぐに医師に連絡してください。
抜けてしまうことがある
もうひとつのデメリットとして挙げられるのは、埋め込んだスクリューが緩んでしまう、または抜け落ちたりしてしまうことです。アンカースクリューは外すことを前提としているため、骨にがっちり結合させたりはしません。外す余地があるということは、さほど高くなくとも一定の脱落率があるということです。 また、アゴの骨が薄くやわらかい方、タバコを毎日たくさん吸う習慣がある方、そもそもの口内環境がよくないというような方にも、脱落は起こりやすい現象です。
アンカースクリューのメリット
最初にデメリットをお伝えしてしまいましたが、わざわざ歯茎に埋め込んでまでアンカースクリューを使用するのは、当然デメリットを上回るメリットがあるためです。 今度はアンカースクリューを使用する際の3つのメリットについて解説します。
抜歯なしで治療できる
アンカースクリューを使用する一番のメリットは、なんと言っても抜歯せずに矯正治療ができるという点です。 歯列をきれいに矯正するためには、抜歯を手段として用いる場合がたくさんあります。単純に一本歯を抜いてしまえば、それだけ歯列にスペースが空きます。そこに列からはみ出している歯を移動させて収めてしまうという方法が、従来では一般的でした。 しかし、アンカースクリューを使用すれば歯を抜く必要がありません。アンカースクリューを使って歯を移動させれば、自然に歯列にスペースを作り出すことができるからです。 抜歯は時間も負担もかなりかかる処置です。この抜歯なしで歯列を整えられるということで、矯正治療へのハードルが下がります。
治療期間を短縮できる
また、アンカースクリュー治療は、ワイヤーなどを使用した従来の矯正治療に比べて、治療期間が短いというメリットがあります。 今までの歯列矯正は、奥歯にワイヤーをかけ、そこを力点として引っ張る力でゆっくり歯を移動させていました。しかしこの奥歯にも同じように力がかかります。お互いに引っ張る力が影響しあって、奥歯も動いてしまうという欠点がありました。 奥歯に急に力をかけると動いてしまうので、上手にセーブしなければなりません。結果、歯を動かすのに長い時間がかかってしまっていたのです。 しかしアンカースクリューは、アゴの骨にしっかりと埋め込んだスクリューに引っ張ってもらうので、従来より強い力をかけても動いてしまうということがありません。 このように、ある程度以上の力を使って一気に歯を動かすことができるようになったため、早期に治療を完了させられるようになりました。
難易度の高い歯の動きに対処できる
アンカースクリューによる治療では、スクリューを埋める位置を変えれば、実に自由な角度から動かしたい歯に力をかけることが可能です。これは、従来の歯列矯正ではできなかったことです。 また、角度に問題がなくとも、そもそも歯の健康に問題があり、骨性癒着などを起こしているケースの場合、従来の矯正治療ではリスクが高過ぎて動かすことができませんでした。アンカースクリューならこのケースにも対応が可能です。 アンカースクリューのおかげで、従来の歯列矯正では手術でしか対応できなかった場合にも、より少ない負担で矯正治療を行うことができるようになったのです。
アンカースクリューの矯正が必要な症例
アンカースクリューを用いた矯正が必要となるのは、主に以下の2つ症例です。
出っ歯
まずは「重度の出っ歯」が挙げられます。 通常、重度の出っ歯治療では出っ歯の後ろに位置する歯を抜いて、そこに歯を収めるように下げる方法で治療します。しかしこの方法では、ワイヤーをかけて出っ歯を後ろに引っ張ってくれるはずの奥歯が、逆に引っ張られて前へ移動してしまうというリスクがありました。 このため、結局あまり出っ歯が後ろに下がってくれない、見た目がいまいち改善しない、というケースが起こりがちでした。 奥歯の位置にアンカースクリューを入れれば、前歯とスクリューがしっかりと引っ張り合い、前歯だけを後ろに空けた所定のスペースに収めることができます。このため、重度の出っ歯でも満足のいく見た目を手にいれることが可能です。
ガミースマイル
アンカースクリュー矯正が有効なもうひとつの症例は、歯を見せて笑った時に、必要以上に上の歯茎が見えてしまう「ガミースマイル」です。一般的には、3mm以上の歯茎が露出してしまう場合を指します。 ガミースマイルは、上の前歯を上後方に引っ張り上げ、歯肉のラインを引き上げるという方法で治療します。しかし、従来の歯列矯正ではこの「上後方に引っ張り上げる」ということが非常に困難でした。このため、ガミースマイルの治療には長らく外科手術が用いられていたのです。 アンカースクリューを使えば、容易に上後方に力を加えることができます。このため、ガミースマイルの治療が以前よりずっと簡単に行えるようになったのです。
まとめ
アンカースクリューについて、理解が深まったのではないでしょうか。アンカースクリューの登場で、今まで治療が困難だったり、大掛かりな手術が必要になってしまうような症例に対しても、比較的手軽にアプローチできるようになりました。 もしも医師から提案された場合は、ぜひこの記事を思い出して、あまり恐怖心を抱かず治療に臨んでいただければと思います。 銀座矯正歯科では、アンカースクリューを用いた矯正治療を行っています。インプラントセーフティーマーク（ISM）を取得し、安心して治療を受けていただける環境づくりに努めています。不安なことはぜひお気軽にご相談ください。
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