歯の矯正治療は、大きく分けてワイヤー矯正とマウスピース矯正の2つがあります。
ワイヤー矯正とマウスピース矯正は一長一短で、どちらの矯正方法を選ぶかは好みや生活のスタイルに合わせるとよいでしょう。
しかしマウスピース矯正では、矯正器具となるマウスピースを取り外して食事が可能です。さらに、目立たないのでワイヤー矯正よりも、人気の高い治療法になっています。
今回はマウスピース矯正での痛みやその原因、対処法などを詳しく解説します。
1:マウスピース矯正の痛み
マウスピース矯正は矯正治療の中で、痛みの少ない治療法として浸透しつつあります。
ただ、痛みがまったくないわけではなく、人によっては痛みを感じるケースもあるようです。痛みの感じ方は個人差が大きいので、一概に「痛い」「痛くない」と断定できないのです。
ここでは、マウスピース矯正の痛みについて解説します。
どのくらい痛い?
痛みを感じるには個人差があるので、誰を基準にしても差が出てしまいます。それでも敢えて言葉で説明するなら、マウスピース矯正の痛みは「歯を指で抑えられているような鈍い痛さ」と表現できます。
痛みはいつまで続く?
痛みが続く期間にも個人差がありますが、新しいマウスピースを装着して2~3日程度と考えておくとよいでしょう。初めてマウスピースを装着したときには違和感を覚える方が多いものの、慣れれば治まってきます。
2:マウスピース矯正が痛いと感じる原因
矯正治療のなかで痛みが少ないといわれるマウスピース矯正ですが、マウスピースを交換した際に、鈍痛と違和感を覚えることがあります。
そもそもマウスピース矯正はワイヤー矯正とは異なり、矯正が完了するまでにおよそ40枚~50枚のマウスピースを順番に入れ替えて歯を動かしていきます。1~2週間に一度程度はマウスピースを新しいものに交換するため、その際に痛みや違和感が出ることがあるのです。
そのほか、マウスピース矯正時に痛みを感じる原因について解説します。
歯が動き始めるため
マウスピース矯正では1枚のマウスピースで、およそ0.25mm歯を移動させることができます。言い換えると、マウスピースを装着するとおよそ0.25mm歯を移動させる力が加わるということになります。
歯が移動するメカニズムは、矯正する力の方向に向かって手前側の歯根膜は広がり新しい骨を作りだします。一方で、反対側の歯根膜は縮まることで、歯根膜の間隔が同じになります。
この動作を0.25mmずつ行うことで、歯を移動させることができるのです。この過程の中で、歯根膜が伸びたり縮んだりする際に痛みを生じやすくなっています。
つまり、新しいマウスピースを装着したときは最も移動させる力が強く加わるために、痛みを生じやすい状況になるのです。
マウスピースの脱着で歯に刺激が加わるため
マウスピース矯正では、20時間以上装着しないと効力がないとされています。
食事と歯みがきのときには外すことができますが、再び装着する際に痛みを感じることが多いようです。
現在の歯並びではなく、将来的な理想的な歯並びに合わせたマウスピースを装着するため、歯に刺激が加わり、痛みを感じることがあります。
矯正力を強めるゴムに引っ張られるため
マウスピース矯正ではゴムを利用して、歯に強い圧力をかけて移動を促す治療を行うことがあります。この場合は通常の方法よりもゴムによる引っ張る力が強いために、痛みを感じやすくなります。
しかし、痛みがあるということは歯が確実に移動している証拠でもあるので、マウスピースを外して装着しなくなると、せっかくの矯正治療が無駄になってしまいます。
どうしても痛みが我慢できない場合は、矯正歯科のドクターに相談することをおすすめします。
歯根膜が敏感になっているため
歯科矯正を行っている間は、歯根膜に力をかけ続けていることになります。そのため歯根膜が敏感になり、痛みを感じやすくなることがあります。
まだマウスピースが馴染んでいないため
マウスピース矯正では、もともと歯のある位置から最終目標となる位置に移動するまでのマウスピースを作成し、その数は全部で40枚~50枚になります。
1枚で動かせる0.25mmの移動が完了すれば、すぐに新しいステップとなるマウスピースに交換します。馴染むまでには時間がかかるので、その間歯を移動させる力によって痛みを感じることがあります。
3:マウスピース矯正の痛みを和らげる方法
ここまで、マウスピース矯正で起きる痛みの原因を解説してきました。
ワイヤー矯正ほどではありませんが、マウスピース矯正でも痛みを感じることはあるでしょう。
そんなとき痛みを和らげる方法を知っておけば、ご自身でも対処できます。
ここで、マウスピース矯正の痛みを和らげる方法を解説します。
痛み止めを服用する
マウスピース矯正で痛みが強く感じられるときには、無理せず痛み止めを処方してもらいましょう。市販の痛み止めでもよいか、処方してもらった方がよいかは、事前に担当医師に聞いておくことをおすすめします。
マウスピースの出っ張りを削る
マウスピース矯正治療をしていて歯ぐきや頬の内側にチクチクとした痛みを感じる場合、マウスピースが出っ張っている可能性があります。
マウスピース矯正では多くのマウスピースを交換して治療するため、なかには出っ張りがほかよりも大きなマウスピースもあります。こうした場合には医師に相談し、痛みを感じる部分の出っ張りを削ってもらいましょう。
出っ張りによる痛みを放置していると、傷ができて口内炎になってしまうこともあるので、早めの処置が重要です。紙やすりを使って自分で削り取ることもできますが、下手な削り方をすると意図した部分とは違う部分が削れてしまう恐れもあります。
自分では行わず、プロの手で削ってもらうことをおすすめします。
虫歯や歯周病の治療を受ける
マウスピース矯正にて治療する前には精密検査を実施し、虫歯や歯周病の治療を施した上で型取り、治療を開始します。
しかし、いつの間にか虫歯や歯周病にかかり、マウスピースによる痛みでなく歯や歯ぐきそのものが痛む場合があります。その際には、一旦矯正治療をストップして虫歯や歯周病の治療を優先する必要があります。
もし虫歯や歯周病を放置してしまうと、そのものの痛みが酷くなるばかりか、マウスピースの歯を動かす力によってさらに痛みが増すこととなります。
虫歯が酷くなり抜歯が必要となった場合には、せっかく作ったマウスピースが合わなくなり、作り直しが必要となることもあるため、とくに矯正中はデンタルケアへの意識を高くもって口腔内を健康に保ちましょう。
また、矯正が始まってからは通院せず、ご自身でマウスピースを装着する方法をとっているクリニックもあります。この場合でも、3~4か月に1回のペースで歯科によるメンテナンスケアを行うと、虫歯や歯周病の予防につながり、マウスピース矯正を中断するリスクを減らすことができます。
まとめ
今回はマウスピース矯正における痛みの原因や、対処法について詳しく解説しました。
マウスピース矯正は、ワイヤー矯正よりも痛みが少ないのが特徴です。さらに、見た目もわかりにくいので、オフィスや学校でも周囲の目線が気になりにくいでしょう。
もし痛みが長く続くときには、矯正歯科のドクターに相談して痛み止めを処方してもらうこともできます。
「痛いから」とマウスピースを装着する時間が少なくなると、予定どおりに治療が進まなくなるため、自己判断で装着を中断せずに治療に取り組みましょう。