歯列矯正と聞くとワイヤー矯正が真っ先に思い浮かぶかもしれませんが、矯正ゴムも歯列矯正に大切な役割を果たします。 医師に着けてもらうものではなく、自分で毎日装着するものなので、矯正ゴムについて理解を深めておくのは重要です。矯正ゴムの種類や、役割、注意点などについて紹介していきましょう。
矯正ゴムとは
矯正ゴムとは歯列矯正に使われているもので、顎間ゴムやエラスティックゴムという呼び名で説明されることもあります。小さな輪ゴムみたいなもので、矯正器具に引っかけて使用するものです。
矯正器具だけでは大まかな歯の移動だけであり、さらに微調整をしてより美しい歯並びにするために矯正ゴムは欠かせません。また矯正のスピードも上がるのがメリットです。矯正ゴムをしなくて済む人もいますが、矯正している人は基本的に利用することになります。
顎間ゴムの種類
ゴムにも種類があり、それぞれ症状に合わせて使用することになります。医師が適切なものを処方してくれますが、一応ゴムの種類について知っておくことで、自分の治療内容への理解もより深まるでしょう。
2級ゴム
出っ歯を改善する際に2級ゴムが使われます。出っ歯は専門用語では上顎前突症と呼ばれており、歯が前に出ているだけの場合と上あご自体が前に出ている場合があります。上は前歯に、下は奥歯に引っかけることで前歯を後ろに動かして整えます。
ゴムを引っかける歯は、犬歯と第一大臼歯であることがほとんどですが、歯の状態は人によってさまざまなので、医師が別の歯に引っかけることを提案する場合もあります。必ず指定された歯に引っかけるようにしましょう。
3級ゴム
2級ゴムの場合とは反対で、3級ゴムでは受け口やしゃくれている症例で使われます。専門用語では、下顎前突や反対咬合と呼ばれています。日本人に多い症例であり、気になるのは見た目だけではなく、発音や滑舌にも悪影響がある歯並びであることが特徴です。
治療法としては下の歯を後ろへ、前歯を前に動かすことになるので、2級ゴムの引っかけ方と完全に反対になります。つまり下の前歯と上の奥歯に引っかけます。
垂直ゴム
垂直ゴムは台形ゴムと呼ばれることもあり、上と下の歯に垂直にゴムをかけて使用します。開咬という噛み合わせたときに上下の歯が噛み合っていない症例で使われます。
とくに前歯と下の歯の間にすき間があることが多く、ものを噛む際に奥歯のみで噛むことになるので、奥歯に負担がかかり顎関節症のリスクが高まったり、ちゃんと食事で噛めていない場合があるので、消化不良に繋がったりすることもあります。ゴムで縦に引っ張って、噛み合わさるように治療します。
クロスゴム
クロスゴムはクロスバイト、日本語では交叉咬合と呼ばれる症例で使います。噛んだときに上の歯が全て、前に出てくる噛み合わせが正常ですが、クロスバイトとは一部の下の歯が前に出てしまって、噛み合わせが左右にずれている症例を指します。
クロスゴムをかける位置は、上下どちらかの歯の表と裏で、噛み合わせをまたいでクロスするように引っかけます。
顎間ゴムの役割
顎間ゴムにさまざまな種類があり、治療に必要なものであることは、ご理解いただけたのではないでしょうか。顎間ゴムは具体的にどのような役割を果たしてくれるのか見ていきましょう。
顎のズレの改善
顎のズレというと上記の症例だとクロスバイトや、シザースバイトと呼ばれる奥歯の上の歯が、異常に外側になっており、下の歯と噛み合っていない噛み合わせなどを指します。 これらは顎の上下がずれているので、噛み合わせが合わないので、うまく噛めなかったり口内を傷つけたりします。
矯正器具と顎間ゴムを組み合わせることで、顎のズレを改善していくことができます。ただし顎間ゴムでも対応できないほどの大きなズレであれば、外科的手術が行われることもあります。
嚙み合わせの改善
顎間ゴムでより、厳密に噛み合わせが合うように改善していくことができます。噛み合わせが悪いと、一部の歯に負担がかかってしまう場合が多いので、矯正器具だけではなく顎間ゴムも使用することでより早く、正しく噛み合わせをよくしていきます。
噛み合わせが変えられるくらいなので、やはり顎間ゴムは引っ張られる感覚があるのは確かです。最初はストレスかもしれませんが、徐々に歯が動くことで落ち着いてくるので我慢しましょう。何か月も痛みが続いた場合は、医師に相談してもよいかもしれません。
顎間ゴムを装着時間と交換頻度
基本的には食事と歯磨き以外は着けっぱなしにしておきます。しかし顎間ゴムの装着時間は症状や、歯並びの状態、治療内容によって人それぞれ違うので、就寝中のみや一日何時間ほどと医師にいわれることもあります。医師に指定された時間を守って装着するようにしましょう。
顎間ゴムは使い捨てになっており、毎日交換して清潔な状態を保つことが大切です。とくにおすすめのタイミングは就寝前です。 寝ている際はただでさえ雑菌が増えやすい状態なので、朝から着けていたものでそのまま寝てしまったら、口内に雑菌がさらに増殖してしまい衛生的とはいえません。
顎間ゴムの注意点
顎間ゴムは慣れたら簡単に装着できますが、いくつか注意点があります。
医師の指示通りに装着する
顎間ゴムは人によって装着方法や装着時間、ゴムの必要量が異なります。まず顎間ゴムを装着する必要があるか否か、装着する期間も当然違います。ネットなどにはいろんな情報がありますが、あくまで医師の指示に従って装着しましょう。
顎間ゴムは小さいものなので取り付けが慣れるまでは難しく、取り付けている途中で吹っ飛んだり切れたりしてなくすこともあります。手でやるのが難しい場合は、専用のスティックやピンセットで取り付けやすくなります。 ゴムがどこかに飛んでいったり、落として失くしたりした場合は大丈夫ですが、うっかり飲み込んだりすることがないよう注意しましょう。
ゴムかけをサボらない
顎間ゴムは最初痛みがある場合もあり、面倒でサボってしまいたくなることもあるかもしれません。しかし顎間ゴムを渡されたということは、治療の上で顎間ゴムが必要だということです。必ずサボらないように毎日装着しましょう。
また食事や歯磨き以外はずっと装着するよういわれたら、食事や歯磨きが終わったらすぐ再び顎間ゴムを装着するようにしましょう。
見た目が気になる
矯正ゴムは見た目が気になるかもしれませんが、矯正ゴムを着けるのは歯並びが大分整ってきた頃です。つまりそれまでずっと既に矯正器具を着けていた状態だったので、途中から矯正ゴムが増えたところで、他人から見たら特別気にならないことが多いです。 中には透明なものなどずっと目立たない器具で治療してきたのに、今更顎間ゴムなんて着けたら目立ってしまうと思われる方もいるかもしれません。
しかしゴムの色も白や透明、半透明が基本なので、ご自身が思っているより目立たないです。中には色がついているものもあり、好きな色を組み合わせてファッション感覚で、矯正ゴムの治療を楽しんでいる患者さんもいます。
【まとめ】
矯正ゴムはあくまで矯正器具の補助的な役割を担っていますが、装着するのとしないのでは、矯正の進み具合や歯並びの美しさが変わってきます。ゴムを使うなんて原始的だと思われたかもしれませんが、ゴムのおかげで少しずつ歯が動いて、治療のクオリティーを上げてくれます。
仕事上どうしても見た目などが気になり、矯正ゴムを装着できない場合は医師に相談しましょう。自分に合った装着時間や、目立ちにくいゴムの提案などをしてくれるはずです。
もし矯正ゴムを着ける段階になったら、治療も終盤に差し掛かっていると、前向きな気もちでゴムかけに取り組みましょう。また矯正ゴムを着けている人を見たら残りの治療頑張ってとエールを送れるといいですね。