矯正治療をおこなう際には歯の裏側に矯正装置を装着して、目立ちにくい治療法を選ぶことも可能です。矯正治療は2~3年の長期間に渡り矯正装置を装着する必要があるため、できるだけ目立たない治療法である裏側矯正が人気です。
しかし、なかには裏側矯正が不可能な方も存在します。そこで今回は、裏側矯正ができない方の例を4つ紹介すると共に、その際の対処法も詳しく解説するので、参考としてください。
1:裏側矯正ができない4つの例
矯正治療は2~3年の長い治療期間を必要とするため、あまり矯正装置が目立たない治療法が好まれます。笑った際にワイヤーやブラケットが見えてしまうと嫌な印象を持たれるのではないかと、心配になってしまう方も少なくないのではないでしょうか。
そこで利用したいのが、歯の裏側に矯正装置を装着する裏側矯正です。ところが裏側矯正は、誰もが利用できる治療法とは言い切れません。ケースによっては裏側矯正を利用できないこともあります。ここでは、裏側矯正が不可能となる4つの例を紹介します。
歯並びが悪すぎる場合
矯正治療は悪い歯並びを治すためにおこなう治療ですが、あまりにも歯並びが悪すぎる場合は裏側矯正を行えません。
この場合は、表側矯正もできないケースがほとんどで、顎の骨に起因する歯並びの悪さが多いです。たとえば、極端な出っ歯や酷い不正咬合(ふせいこうごう)などは、顎の骨が原因になって起きていることが多く、外科矯正での対応となります。
舌のサイズが大きい場合
舌のサイズが標準よりも大きい方も、裏側矯正は難しいでしょう。どうして舌のサイズが治療に関係するのか不思議かも知れませんが、舌が大きいと治療の妨げになってしまいます。
表側矯正であれば、舌が自然にブラケットに当たることはありません。しかし、裏側矯正の場合は歯の裏側にブラケットを当てているため、舌が標準よりも大きな場合には、無理に矯正装置を付けてしまうと食事や会話の際に舌を噛んでしまう恐れがあります。
噛み合わせが深い場合
噛み合わせが深くなる過蓋咬合(かがいこうごう)が極端な方も、裏側矯正が不可能となります。上下の歯を噛み合わせる度に、歯の裏側に装着しているワイヤーやブラケットが前歯の裏側でぶつかってしまうためです。
程度によっては裏側矯正も可能ですが、重症の場合はぶつかり合うことで矯正装置がズレてしまったり外れてしまったりするので、裏側矯正には適合しません。
医院が裏側矯正を取り扱っていない場合
裏側矯正は表側矯正よりも高度な技術を必要とする治療となります。歯の表と裏では形状に大きな差があり、表側のほうが裏側よりもブラケットが装着しやすい形状です。
一方で歯の裏側は、平面ではなく反り返った形状をしており、表側よりもブラケットを装着する面積も少なくなっています。したがって、裏側矯正を施す難易度はとても高く、豊富な経験と高い技術を持った医師でないと施術できないことがほとんどです。
2:裏側矯正はできないと医師に言い渡された場合
ここまでで裏側矯正ができない4つの例を紹介してきましたが、どれも自分では自覚できないものばかりです。
「歯並びが悪すぎる」といわれても、明確な基準はないのでどこまでが許容範囲なのか分かりません。舌のサイズにしても、どの大きさが標準なのか把握している方はいないと思われます。噛み合わせが深い場合でも、その自覚があるかは不明です。
そこで「裏側矯正ができない」といわれた場合は、セカンドオピニオンの利用をおすすめします。もちろん矯正歯科も例外ではないので、セカンドオピニオンにて本当に裏側矯正が不可能なのかどうかを確かめることは重要です。
3:裏側矯正で改善が見込める歯並び
裏側矯正で現在の歯並びが改善するなら、ぜひとも裏側矯正を施したい方は多いはずです。ここでは、裏側矯正をおこなうことで改善が見込める歯並びについて解説します。
上下顎前突
上下顎前突(じょうかがくぜんとつ)とは、上の歯も下の歯も両方が前に突き出ている状況の歯並びのことです。一見きれいな歯並びに見えますが、横から見ると通常の歯並びとは異なることがよく分かります。
また、正常な歯並びと比べると口が閉じにくいため、いつも歯が見える状況にあります。この症状の原因としては遺伝的なものとされています。
口を閉じる機会が少なくなるので前歯が乾燥しやすくなり、唾液による殺菌効果が薄まるため虫歯や歯周病になりやすくなってきます。さらに見た目が美しくないため、コンプレックスに悩まされることもあるでしょう。突き出た上下の歯は、裏側矯正をすれば引っ込めることが可能です。
上顎前突
上顎前突(じょうがくぜんとつ)とは、一般的には出っ歯と呼ばれる症状です。日本人に多い症状のひとつで、人口の約13%が出っ歯といわれています。
出っ歯とは上の前歯が下の前歯よりも前に出ている状況ですが、その程度には個人差があり、全ての方が矯正治療を必要とする訳ではありません。
上の前歯が極端に前に出ている場合は、口を閉じづらくなり前歯が虫歯や歯周病にかかりやすくなります。また、発音障害や顎関節症を引き起こすなど重症なケースでは、矯正治療が効果的です。
上顎前突は上の歯だけを引っ込めればいいので、裏側矯正がとても有効になってきます。犬歯から犬歯までは6本の歯がありますが、この6本を裏側矯正でまとめて引っ込めることが可能です。
過蓋咬合
過蓋咬合(かがいこうごう)とは、上の歯の噛み合わせが深くなった状態のことです。原因としては遺伝的なものが多く、そのほか乳歯から永久歯への生え変わりが上手くいかなかった場合や、永久歯の先天欠如などが挙げられます。
過蓋咬合を放置しておくと顎の関節に大きな負担がかかり、顎関節症を引き起こす原因になります。また身体のバランスを崩しやすく、自律神経失調症の原因を作ってしまうケースも見られます。一見すれば歯並びが悪いとは思えないので放置しがちですが、色々と身体への負担がかかる症状なので治療をおすすめします。
治療法は裏側矯正がベストです。歯の裏側に矯正装置を装着することで下の前歯が前に押し出される効果を得られるため、噛み合わせを浅くするには効果的な治療法です。
すきっ歯
すきっ歯は前歯の歯と歯の間に隙間がある状態のことで、噛み合わせが深い歯並びに多く見られる症状です。
すきっ歯を放置しておくと、歯と歯の間に食べカスが挟まったり、隙間から空気が漏れることで発音不良になったりする恐れもあります。
噛み合わせが深い状態を改善するには裏側矯正が効果的なので、すきっ歯にも裏側矯正が有効な治療法となります。
鋏状咬合
鋏状咬合(はさみじょうこうごう)とは別名シザーバイトとも呼ばれる症状で、上の奥歯が外側に下の奥歯が内側にズレている状態のことです。
正常な奥歯は上下が噛み合うことで、食事の際に食べ物を噛み砕き、すり潰すことができます。しかし、鋏状咬合の場合は上下の歯が噛み合わないために、上手く食べ物を噛めない状況になっています。
鋏状咬合が起きていても痛みや違和感はないため、放置しがちな症状ですが治療を施さないと身体に悪影響をおよぼします。完全に食べ物を咀嚼できないので、胃に負担をかけてしまい、栄養の吸収もよくありません。その結果、体調不良を引き起こす原因になってしまいます。
また、上下の奥歯が角度を持っているために、正しいブラッシングができずに虫歯や歯周病になりやすい状況にあります。この症状にも裏側矯正が有効で、表側矯正よりも高い治療効果を発揮します。
まとめ
今回は裏側矯正ができない例を4つ紹介する共に「裏側矯正はできない」と医師に言い渡された場合には、セカンドオピニオンを利用することを解説してきました。
基本的に表側矯正が可能な歯並びであれば、裏側矯正も可能です。記事内では裏側矯正が不可能なケースを4例紹介していますが、裏側矯正ができないといわれた場合はセカンドオピニオンで確認することが重要です。
また、表側矯正よりも裏側矯正のほうが高い効果のある症状も解説しています。該当する症状に悩まされているなら、審美性に優れている裏側矯正にてきれいな歯並びを手に入れましょう。