歯列矯正には「表側矯正」に加えて「裏側矯正」があるのをご存じですか?
裏側矯正とは歯の裏側にブラケットを装着するタイプの矯正で、矯正中であることが外部からわかりにくく、や食べかすが詰まりにくい、口の中の粘膜を傷つけにくいなどさまざまなメリットがあります。
しかし、歯の裏側にブラケットを装着するため滑舌に影響するデメリットも考慮しなければなりません。この記事では裏側矯正の滑舌について解説します。
1:裏側矯正による滑舌への影響
裏側矯正とは歯の裏側にブラケットを装着する矯正方法です。
見た目からは歯列矯正中であるのがわかりにくいメリットがあるものの、滑舌に影響を与えるというデメリットがあるのも事実です。ここでは裏側矯正による滑舌の影響について考えられるものを3つご紹介します。
スムーズに発音できなくなる
歯の裏側にブラケットを装着することによって、舌の動きが悪くなったりブラケットそのものに舌が引っかかってしまったりなどのトラブルが生じやすくなります。ブラケットやワイヤーが歯の裏側に設置されているために、舌の収まる口内スペースが縮小され、表側矯正よりも舌を動かしづらくなり滑舌が悪化すると考えられています。歯の裏側に矯正器具を常時装着しているので、最初は違和感があり、発音がスムーズにできなくなってしまうのです。
発音しにくい音がある
裏側矯正は、歯の裏にブラケット・ワイヤーを装着します。そのため、歯の裏側や歯茎に舌が触れる発音が困難と考えられています。
「サ行」
「ザ行」
「タ行」
「ダ行」
「ナ行」
「ラ行」
上記6種類の発音には、舌の動きが密接に関係しています。歯の裏側に矯正器具を装着している場合、これらの発音がしにくくなることを考慮する必要があります。
しばらくすれば慣れてくる
裏側矯正であってもしばらくすれば慣れてきます。早い人であれば数日・数週間ほどで慣れる方もいます。裏側矯正を検討する方は、最初は慣れなくても、次第に順応できることや、慣れるまでの期間は個人差があると考えるとよいでしょう。
2:裏側矯正で滑舌をよくするコツ
裏側矯正を導入したことで滑舌が気になるなら、滑舌をよくするコツを取り入れるといいでしょう。
時間の経過によって徐々に慣れてくる裏側矯正ですが、できなら早いうちに慣れ、通常と変わらない生活を送りたい方も多いでしょう。
ここでは裏側矯正を検討する方や、裏側矯正を実際に導入したあの滑舌が気になる方へ、以下3つのトレーニング方法をご紹介します。
・母音のトレーニング
・舌のトレーニング
・早口言葉の練習
母音のトレーニング
現代日本では、母音は「あいうえお」の5音です。「らりるれろ」を伸ばして発音してみると「ら(あ)り(い)る(う)れ(え)ろ(お)」となるのが確認できるでしょう。
この母音が正確に発音できていないと、滑舌が気になったり聞き取りにくかったりといった影響が出ます。裏側矯正によって滑舌が気になる場合は、まず母音がしっかり発音できるようなトレーニングを取り入れるとよいでしょう。
この方法は「母音法」と呼ばれ、子音も母音で発音するトレーニングを実施することで言葉がより明瞭になり、滑舌が改善されます。
「おはよう」であれば「おあおう」、「こんにちは」であれば「おんいいあ」など、すべての言葉を母音で発音してみてください。そうすることで一音一音細切れに発音する意識が高まり、裏側矯正による滑舌の違和感を改善します。
舌のトレーニング
裏側矯正による滑舌の違和感には舌のトレーニングも効果的です。舌のトレーニングとは、筋肉の塊とも考えられる舌を手や足と同じように鍛えることを指します。主な方法としては以下の通りです。
・上顎に舌を密着させたまま奥歯で噛んで口を閉じる方法
・ガムを噛みながら舌に乗せたり丸めたり、押し上げたりする方法
・「あ」「い」「う」「べ」と口を動かし、「べ」の時に舌を下に思い切り伸ばす方法
舌の動きや位置を意識しながら取り入れることで舌の筋力を高めやすく、滑舌改善につながります。
早口言葉の練習
早口言葉も滑舌改善には効果的なトレーニング法です。「サ行」「ザ行」「タ行」「ダ行」「ナ行」「ラ行」の発音が気になる裏側矯正には以下の早口言葉がおすすめです。
「バナナの謎はまだ謎なのだぞ」
「パジェロ全車種に標準装備」
「住商訴訟勝訴」
「ジャズ歌手シャンソン歌手新春シャンソンショー」
「商社の社長が調査書捜査」
3:滑舌への影響が少ない裏側矯正もある
裏側矯正の種類によっては、滑舌への影響が少ないタイプもあります。
ここでは滑舌への影響が少ない裏側矯正について4つご紹介します。
・アリアス
・インコグニート
・クリッピーL
・STbライトリンガルシステム
これから歯列矯正をしようと考えている方、できれば見た目も日常生活にも気になりにくい裏側矯正を検討する方は参考にしてください。
アリアス
アリアスとは従来のクリッパー・ワイヤーの形状を最大50%まで小さくした歯列矯正です。
従来の裏側矯正よりも矯正器具が小さいため、発音時の不快感が少ないといった特徴があります。サイズが小さくても裏側矯正であるため、食事やスポーツを思い切り楽しめるほか、歯列矯正の進行具合が確認しやすいといったメリットもあります。
しかしアリアスは、一般的な表側矯正よりも1.5倍ほど高額ともいわれています。その理由はオーダーメイドの矯正器具を取り入れているためです。表側矯正よりもメリットは多いものの、やや費用負担が大きい点は、アリアスを検討する際に視野に入れておくとよいでしょう。
インコグニート
インコグニートもアリアス同様、オーダーメイドで矯正器具を作成し治療を進めていく方法です。従来の歯列矯正に使用されるブラケットよりも厚みを感じにくくするため、研磨されているのが特徴です。
少し凹んでいることから、舌に引っかかりにくく滑舌に影響しにくいといったメリットがあります。
完全オーダーメイドであるため、装着までに時間はかかるものの、既存のブラケットを使用しないことから治療期間の短縮にもつながります。
クリッピーL
クリッピーLとは通常のブラケットよりも小さくした装置を使用する歯列矯正です。独自のクリップ構造を持つブラケットで、弱い力でも歯を動かせるといった特徴があります。
歯列矯正に伴いやすい痛みを感じにくい点や治療期間の短縮、滑舌にも影響しにくいといったうれしいメリットがある歯列矯正です。
stbライトリンガルシステム
stbライトリンガルシステムもクリッピーL同様に小型のブラケットを採用しています。一般的な裏側矯正に比べて半分ほどの大きさであるため、違和感の少ないブラケットとして定評があります。
stbライトリンガルシステムのブラケットは丸みを帯びているため、舌に引っかかりにくい点や、ブラケット同士の距離が伸びたことによってワイヤーの力によって歯を動かしやすいといった特徴もあります。
ブラケットが小さいため滑舌はもちろんのこと、食事や睡眠時、歯磨きの時も違和感が少なく、メリットが大きいのも特徴です。
まとめ
裏側矯正は一般的な表側矯正とは異なり「歯列矯正がわかりにくい」「歯列矯正の進行具合が目に見えてわかる」などの大きなメリットがあります。
しかし、歯の裏側に矯正器具を装着することから、滑舌や食事の際などに違和感をもちやすいといったデメリットがあるのも事実です。
裏側矯正を検討する方は、本記事でご紹介した各種トレーニング法や滑舌が気になりにくい裏側矯正を取り入れることで、より快適な歯列矯正が可能になるでしょう。