子供の矯正治療について
本来、子供の矯正とは歯を動かして見た目をキレイに直すことではありません。歯並びは見た目だけでなく、お子さんの発育に大きな影響を及ぼします。当院では、将来的に不正咬合にならないよう、成長の状態をきちんと診断し、発育を妨げるような歯並びや癖を改善するために、いま何をすべきかを判断しています。
なお、お子さんの矯正治療にはスピードを重視した矯正は行いません。また、ブラケット装着による矯正治療も必要がなければ行わない場合があります。
どのような治療が必要か知ることが大切です
歯並びが悪くなる原因、あるいは状態や症状は一人ひとり異なります。治療開始時期もそれぞれ違ってきます。今後どのようなタイミングで治療をしていくべきかの判断は、一生使い続けていく「歯」にとってとても大切です。
お子さんの口元になにか不安がある場合は早めにご相談ください。顎の状態によっては成長力を使って、早期から治療を開始した方が良い場合もあります。早い時期からご相談いただければ、適切な治療開始時期を見極めることができます。
適正な治療が将来の美しい口元をつくります
当院では、お子さんの正常な発育を促すために、どの治療方法が適しているかをきちんと診断して、症状に合わせて選択します。ブラケット装着をしなくても矯正が可能な場合は使用せず、生活習慣の改善で顎や顔の成長のバランスを整えます。
お子さんの歯並びは姿勢や歩き方など、ちょっとした癖が大きく影響しています。そのため、成長過程にある幼いお子さんの場合、生活習慣を整えることが非常に有効です。当院では食事指導、姿勢指導、呼吸、咀嚼の仕方、舌の訓練、栄養学など、様々な角度からアプローチすることで、健全な成長を促す場合もあります。
何よりも、幼いときから自分の歯のことを意識し、正しいケアを習慣にすることが大切です。将来的に矯正治療が必要になったとしても、早期から治療改善することで症状を和らげ矯正治療の負荷を軽減できます。
子どもの治療の流れについて
小児矯正は第一期と第二期に分かれており、第一期治療は乳歯や、乳歯と永久歯が混ざっている時期で、年齢の目安としては3~10歳位まで。
第二期は、永久歯に生え揃ってからブラケット等をつけて行う治療です。
ステップ1/第一期治療(学童期)
この時期は、直接、歯に力をかけて動かすよりも、成長とともに状態を悪化させる要因を取り除き、できるだけバランスのとれた成長発育を促すよう、軌道修正をする期間をいいます。ブラケットを使わず、マウスピース等で歯の生えかわりと顎骨の成長を利用して成長発育のアシストをする治療です。
1.抜歯の可能性が減ります
顎を広げたり顎の成長を促す事により、第二期治療に移行した際、抜歯の可能性を減らすことができます。
2.仕上がりが良くなります
顎の成長をバランスよく保つことで、矯正がより良く仕上がります。
3.顎の曲りを減らす(もしくは無くす)ことができます
小児期は噛み合わせを改善することで顎偏位が改善する可能性が成人よりも高くなっております。
4.手術の可能性を減らせます
あらかじめ噛み合わせを治す事で、噛み合わせのバランスのとれた顎の成長が起こり、手術の必要性が減少します。
5.ブラケット装置を付ける期間を減少させることができます
小児期に歯並びを改善することで、本格矯正が必要となった時、治療期間を短縮することができます。
6.歯並びが悪く生えてくるのを減少させます
乳歯の抜歯のタイミングをコントロールすることで、悪い方向に生える原因を減少させ、噛み合わせを良い状態に導きます。
7.歯、顎への負担の減少
早期に歯並びを改善することで、生え変わり時期の悪い噛み合わせが原因の極端な歯のすり減り、顎への負担を減少させます。
8.コンプレックスの解消
早めに目立つ部分の歯並びを改善してあげることで、健全な精神発達の環境を整えられます。
ステップ2/第2期治療(中学生以降)
基本的には大人の矯正と同じです。上下すべての歯にブラケットを装着し全体の噛み合わせを改善し、仕上げる治療です。
※ 初診時に永久歯が生え揃っている方は第2期治療からとなります。
歯並びのよい子に育てるために!
かむ力にも影響大!食事中の姿勢
子供の座高にぴったりの椅子とテーブルを使っていますか?
以前行った調査では、ダイニングテーブルに座って食事をしている子の55%は「足が安定していない(大人用の椅子に座るなどして、足がブラブラしている)」と答えています。実は、足がブラブラしている状態では、咬合力(噛む力)も咬合面積も15%ダウンしていることがわかっています。小さな子にはぜひ、足置きのある子供椅子に座ってもらいたいものです。食事中の姿勢が真っ直ぐになります。
では、正座して食べればいいのか…というと、そうでもありません。座卓で食べている子の場合も半数近くが「足を崩して食べる」と答えていて、正しい姿勢とは程遠い状態。足を崩して食事をすると、体の軸がずれた状態でかむことになるので、あごの発育に悪影響が出るだけでなく、脊椎など、全身がゆがむ原因になるのです。
足置き台が咬合力と咬合面積に及ぼす影響
日頃の姿勢があごの形を決める
「姿勢の悪い子が増えている」というのは、小児歯科医のみならず、多くの人が感じていることでしょう。猫背の子も多いですが、脱力系の姿勢(首がガクッと前に出て、下あごがさがり、口がポカンと開いたような姿勢)の子も増えてきたように思います。
これは腹筋や背筋力など体を支える筋肉が育っていないことと無関係ではないと思います。ほかにも、首が左右どちらかに傾いでいる子も気になりますね。このような姿勢の悪さは、あごの形と非常に深くかかわってきます。
姿勢は真っ直ぐですか?
臨床的な経験からいうと、猫背の子には過蓋咬合の子が多いようです。脱力系の子には上顎前突が多く、首が左右どちらかに傾いだ子は咬み合わせがズレている傾向があります。もちろん歯数の問題、生える順番等の問題もあるでしょう。
しかしながら、本来正しい咬み合わせとなるべき子供が、生活習慣が悪いために不正咬合を引き起こしているとしたら、後から後悔しても遅いのです。正しい姿勢を保つことは、あごだけでなく、体のすべての骨を正しく育てることにつながります。姿勢を保てるだけの腹筋力や背筋力を育ててほしい、そのためには外で体を動かして遊んでほしいと強く思います。
あごの形をゆがめるくせ
姿勢や口呼吸のほかにも、さまざまなくせがあごの形をゆがめています。猫背、横を向いて食事をする、左右どちらかだけを下にして寝る、えんぴつや爪をかむ、唇をなめる、かむ、吸う…さまざまなくせが、知らず知らずのうちにあごの形をゆがめ、不正咬合の原因をつくっています。なかでも、あごをゆがめるくせのナンバーワンが指しゃぶりです。
上顎前突(出っ歯)、開咬、交叉咬合、叢生などさまざまな不正咬合の原因となります。
なぜ指しゃぶりが歯並びを悪くする?
●指で上あごを前に押す
指しゃぶりでもっとも問題が大きい「親指吸引」の場合、上あごと上の前歯が前に押し続けられます。
その結果、あごや歯が前方に突き出る上顎前突になるのです。
●上くちびるがめくれあがる
指しゃぶりをする子は、鼻づまりがなくてもいつも口をぽかんと開ける傾向があります。その結果口呼吸が習慣化してしまい、上くちびるがしまりなくめくれあがってしまうのです。
●あごがせまくなる
指を吸引しているとあごの側面が常に圧迫されるため、あごの横方向への発達が阻害されます。そのためきれいな馬蹄形にならずV字型のあごになってしまいます。
●上下の前歯にすき間ができる
しゃぶっている指の影響で、上の前歯が前に押し出され、下の前歯が内側に引っ込みます。そのため、歯と歯の間に指の厚さ分のすき間ができ、開咬になってしまいます。
●舌癖が始まる
上下の前歯の間にすき間ができると、食べ物を飲み込む時に前歯の間に舌を押しつけ、はさむくせが出てきます。サ行、タ行、ナ行、ラ行などが舌足らずとなり、発音が不明瞭になります。
●上下の歯がずれる
上あごの横幅が狭くなると、順調に育った下あごとのバランスが悪くなって、上下の歯がうまくかみ合わなくなります。そのため、歯を横にずらしてかむ習慣がつき、交叉咬合の原因になります。
指しゃぶりを楽しく卒業!
〝あごの形をゆがめるくせ〟を読んで「指しゃぶりなんて早くやめさせなくちゃ!」と焦ってしまった人も少なくないと思いますが、2才頃までの指しゃぶりは生理的なもの。そのままさせておいても問題はありません。3才を過ぎれば乳歯の歯並びに多少の影響がでますが、4才になるまでにやめさせれば永久歯への影響はほとんどありません。
「4才の誕生日までに卒業」が目安です。では、どうすれば指しゃぶりをやめさせることができるのでしょうか?それは、ボンヤリした時間、ヒマな時間を作らないことです。外で思いっきり体を動かして遊ばせ、家ではたくさんの手遊びや家事の手伝い、寝る時には手をつないで添い寝…ママは大変ですが、3か月間頑張ってみて!きっと楽しい気持ちで卒業できるはず。
指しゃぶりを忘れさせるアイディア大特集
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子どもの食生活-8つの提案
子どもの食生活について気をつけていただきたいことが、大切な順番に8つ書いてあります。大切なことほど簡単で手間がかからず、経済的なため、誰でもできます。逆に、できれば気をつけていただきたい小さな問題ほど、手間もお金もかかり難しくなります。ですからこの順番を間違うことのないようにしてください。
以下の項目では、特に 1~ 4までが大切です。
1~ 4を抜きにして、5以降を見直すことはできません。1から順番に見直してください。
1子どもの飲み物は、水・麦茶・ほうじ茶
成長期の子どもは、代謝が激しい(水分の入れ替えが大きい)ため、水分欲求が大きいのが特徴です。したがって、飲み物の選択がもっとも大切です。飲み物は水分を補給するものであって、熱量(カロリー)を摂るものではありません。飲み物で熱量を摂ってしまうと、きちんと食事をしなくなってしまいます。飲み物は、熱量のない水、麦茶、ほうじ茶などにしましょう。
2朝ご飯をしっかり食べさせる
朝食はできるだけ「ご飯と味噌汁」を食べさせてください。忙しい場合は、前夜のご飯と味噌汁を温め直せば十分です。
副食は焼きのり、納豆、佃煮、梅干し、ふりかけなどの常備食を利用しましょう。
食事を作る時間、食べる時間がないときはパンも仕方ありません。食べさせないよりはよいでしょう。ただし、パンはお菓子を食べさせているようなものですので、常食は好ましくありません。
3子どものおやつは食事
子どものおやつは、4回目の食事です。ただし、4回も食事を作るのは大変ですから、簡単なものでよいのです。おにぎりやのり巻きなどが一番好ましく、うどん、そば、さつまいも。トウモロコシ、せんべいなどの「穀類」「いも類」を中心にしましょう。砂糖の入ったお菓子や油脂類の多いお菓子は極力控えたいものです。スナック菓子と清涼飲料水(スポーツ飲料など)は買わないようにしましょう。
4カタカナ主食は日曜日に
ラーメン・パン・シリアル・パスタ・ピザ・ハンバーガー・焼きそば・お好み焼きなど「油型」の主食は週に1~2回までにしてください。カタカナ主食に合わせる副食は、油脂が多くなる傾向があるため好ましくありません。
5副食の基本は野菜。海藻類
副食は季節の野菜、海藻類、いも類などを中心にします。野菜料理は、煮物、和え物、おひたしなど油の少ない料理を中心にしましょう。
6動物性食品は魚介類を中心にする
動物性食品は魚介類を中心にしましょう。肉や食肉加工品、乳製品などは控えめにしましょう。
7未精製の米を常食にする
可能であれば、米は未精製の「ご飯」を常食したいものです。一番のお勧めは5分づき米です。栄養素は十分残っているにもかかわらず、比較的白いため食べやすく、一般の電気炊飯器で炊くことができます。あるいは、7分づき米や胚芽米などもよいでしょう。いずれにしても、家族全員が食べられるものを選びたいものです。
8食品の安全性にも配慮する
無理のない範囲で、食品添加物、農薬、ポストハーベスト農薬などに配慮したいものです。あくまでも【4】までを見直してから検討しましょう。
小児矯正の知識を深めよう
口呼吸、舌突出し、不正な嚥下、その他の筋機能癖のような軟組織障害は不正咬合、顔面の発育不全、後戻りの原因になります。
頭蓋顔面の発育や歯列に対する筋機能癖の影響については、Edward Angleの時代から報告されてきました。最近の研究でも、叢生や顎の不一致は必ずしも遺伝的なものではなく、幼児期における嚥下や呼吸の方法に原因があると報告されています。