出展「矯正歯科治療のためのコルチコトミー」著者:深澤 真一
編集:Federico Brugnami,Alfonso Caiazzo
歯科矯正用アンカースクリューを使用した矯正歯科治療とは
歯を抜きたくない、もしくは既に歯を抜かれてしまっている状態などの患者さまに矯正治療を行う際に有効な方法で、歯を動かすときに、力のささえとなるところ(固定源)としてインプラントを併用する治療法です。この方法では、歯の骨の近くに歯科矯正用アンカースクリューというビスを埋め込み、歯を移動させていきます。
歯科矯正用アンカースクリューは、2012年に厚生労働省の認可を受た治療方法です。また、ヘミオステオトミー(モディファイドコルチコトミー)と併用することで、矯正にかかる治療期間を大幅に短縮できる可能性が高くなります。
歯科矯正用アンカースクリューの目的と種類
歯科矯正用アンカースクリューは、従来のヘッドギアーなど固定源を強化する装置の代わりに使用します。ヘッドギアー等でみられる使用時間のばらつきがないため、確実に歯が動きます。また、従来では難しかった歯の移動も可能になってきています。
目的にあわせて2種類の歯科矯正用アンカースクリューがあります。
歯科矯正用アンカースクリューの目的
1治療システムをシンプルにする
2.治療期間を短縮する
3.歯を抜かない
4.口元の審美的改善など
スクリュータイプ
通常スクリュータイプの歯科矯正用アンカースクリューは、サイズが小さいため埋入手術をしても腫れ上がることはまずありません。しかしながら、埋入部位は歯と歯の間であまり大きな力をかけることができないので、多くの歯を一度に移動させることはできません。
しかし当院オリジナルのフカサワインプラントは従来のものより大きなスクリューを顎骨に埋入することで、大きな力をかけ、多くの歯をいっぺんに移動させることを可能にしました。スクリュータイプなのでカラダへの負担も少なく、術後大きく腫れ上がることはほとんどありません。
プレートタイプ
世界で初めて考えたのは、スイスのDrトリアッカと言われています。プレートタイプは大きなインプラントなのでスクリュータイプよりも多くの歯をいっぺんに移動することができます。しかし欠点としては腫れが大きいことです。
当院はインプラント・セーフティー・マークを取得しています
2012年5月、当院はNPO法人歯科医療情報推進機構によるインプラントセーフティマーク(ISM)の認定審査に合格、「安心・安全な医療環境である」と認められました。当院は顧問の母校であるニューヨーク大学のインプラントシステムを実践しています。
『インプラントセーフティーマーク(ISM)制度』の審査を受けた理由は、患者さまに”安全な治療”を選んでいただけるようにするためです。
「患者さまの安全を第一に考えている」ことが客観的に評価され、より一層安心して患者さまに治療を受けていただけるのではないかと思っております。
インプラントセーフティーマーク(ISM)制度
中立的な第三者機関が医療機関や歯科医師の評価を行い、認定することが望ましく、正しいことであることは世界の常識ですが、残念なことに我が国では、問題起きてから始めて第三者機関の必要性が取り上げられます。
インプラントについては、2007年に起こったインプラント死亡事故の執刀医が2011年8月に書類送検されたのを皮切りに、インプラントに関する様々な問題がテレビで取り上げられるようになったのを受けて、第三者機関であるIDIが歯科医療機関を対象に、安心・安全な医療環境の評価・認定を行う『インプラントセーフティーマーク(ISM)制度』を発足させました。
インプラントセーフティーマーク 認定基準
以下の5つの基準に沿って現地調査を行い、その総合評価で判定を行います。(IDI ホームページより)
- 医療安全管理基準
方針やマニュアル、緊急時対応、アクシデント・インシデント情報の収集、自己予防策 など - 感染対策管理基準
院内の清潔保持、マニュアルの有無と運用状況、感染予防対策、滅菌の状況、廃棄物処理 など - 患者中心の治療基準
インフォームド・コンセント、セカンドオピニオン対応、個人情報保護、診療録の開示、患者の快適性・利便性への配慮 など - 診療の質基準
施設・設備、機器、インプラントの保管状況、インプラントの使用手順、診療録・診療諸記録の記載・管理、クリニカルパスの作成・運用、インプラント・マネージャー、口腔内環境の術前改善、手術前後の環境やフォロー体制、補綴物の基準、医薬品の管理、治療成績の調査・分析・改善 など - 総合的マネージメント基準
理念・方針、連携医療機関、心肺蘇生訓練、事故保証対応、職員教育(診療、医療安全、感染対策、個人情報保護、接遇) など
NPO 法人歯科医療情報推進機構(IDI)
歯科診療所の歯科医療機能を客観的に評価することを目的として、平成17年に設置された我が国初・唯一の第三者機関。志を高く持った歯科医療従事者や歯科診療所の自発的な参加・協力により、歯科診療所機能の評価と、歯科診療に関する客観的で適切な情報を行っています。
リスクを回避するために
2007年、東京日本橋の歯科医院で、インプラント手術により死亡事故が起きてしまいました。歯科矯正用アンカースクリューの手術は決して難しい手術ではありません。しかしながら、簡単といっても手術は手術。患者さまの体に負担をかける訳ですから、高い技術と安全性が求められます。
当院では顧問の深澤を中心に、ニューヨーク大学を卒業後も定期的に母校での勉強を継続しています。もちろんプレートタイプにおいてはDrトリアッカのもとで年1回トレーニングを継続し、その技術と治療方法を習得しています。インプラント矯正を安全に行うには、インプラント学と矯正学、両方の技術と知識が必要なのです。